うつ病は心の風邪ではない。薬を飲んで回復を待つだけでは、恐らく治らないだろう。
そもそもうつ病は治ることはない。寛解といって、状態が落ち着くことをもってよしとする。
これは「一回入ってしまった思考回路にはまたハマる可能性がある」ということなのだろう。とにかく、長く付き合うことになるのがうつ病である。
うつ克服の流れは何度か書いてきたが、今一度確認しよう。
まずはゆっくり休む
ゆっくり休んだところで治りはしないが、休むことは非常に重要である。
頭のワーキングメモリが、制御できない不安に占領されて、通常の思考回路が働かなくなっている。これは、比喩でも何でもなく、まさに脳の信号が不安だらけになって、いつも警報を鳴らしている状態になっているのだ。
普通に働いていては常に頭に情報が流れ込み、処理が追いつかずに不安が増大していくばかりである(厄介なことにうつのときは、普通のことであっても警報を鳴らし始めてしまうのだ)。一旦、休職するなどをしてリセットをしたほうがいい。
はじめのうちは、眠りたいときに寝て、食べたいときに食べたらいい。昼夜逆転しても構わない。インフルエンザのときもそんな感じだろう?
心配しなくても余裕が戻ってくれば自ずと昼夜逆転はなおる。なぜならば、そちらのほうが体にとって都合がいいからだ。
レベル1からやりなおし
ゆっくり休んだらリハビリの開始である。そのとき、以前のよくできたときの自分と比べてはいけない。
骨折した陸上選手が、入院後すぐに同じレベルで走ろうとしたら、やはり無理があると考えるだろう。
うつ病で休職中であるならば、それは骨折で入院しているのと変わらない。
やっとベッドで起き上がることができる程度の状態なのに、焦って走り回ろうとしても悪化するだけだ。
まずは自分のできることを一つ一つ確認しよう。できないことではなく、できることに目を向けていくのがポイントだ。
そもそも「以前のよくできたときの自分」は今よりも若くてはつらつとしているではないか。そのときと比べたらできないことのほうが多いのは当たり前のことである。
復職してからが本番
レベル1からやり直しているはずなのだが、復職すると同僚や上司は以前のように働けるものと勘違いをしてしまうことがほとんどだ。
ここで自分もそのように「以前のように働けるもの」思ってしまっていると悲劇が起きる。
意気揚々と仕事を始めたもののすぐにアッパーに達してしまい、「大丈夫です!」と自分で言った言葉が自分の首を締めるようになる。
そして2度めの休職・・・そして自分に絶望して・・・ということも少なからずあるときく。
ここは時短出勤やそれに準ずる勤務体系を、お医者さんやカウンセラーと相談し、それを上司とすり合わせて人事の承認を得て実行するという形になるだろう。
これが、本当につらく難しいことなのだ。
そんな折衝ができるくらいなら、恐らくうつにはならなかっただろう。
しかしながら、これをやらないことには周りの協力を得ることができない。周りの協力を得ることなくして、うつの寛解はできないのである。
ただ、これを乗り越えることで、今までの働き方が良くなかったことが分かるようになる。協力の求め方が分かるようになる。そして、希望の光が見えてくるのだ。
緩やかな回復
好調・不調を繰り返し、緩やかに勤怠が安定傾向を見せ始めるようになる。
もちろん、ぐっと調子が悪くなることもあるし、ちょっと頑張ってうまく安定してきたと思ったら、調子に乗ってしまってヘトヘトになることもあるだろう。
一気には回復しない。それは数ヶ月というレベルではなく、数年にも及ぶ。
休職の手当があっても給料の2/3なので借金ができたり、通常勤務ではないことでそもそもの給料が減ったりして、さらに借金がかさんでいく。
それがメンタルに悪い影響を及ぼすことは想像に難くない。
そういった乗り越えるべき壁が次々に現れる。しかもこれは病気をしなかったら現れてこなかったであろう壁で、タフさを要求してくる。
ただ、ここまでになってくると、「逆戻りはしない」という自信が生まれるし、どういう状態を目指せばいいのかが、体でわかってくる。
最後に
「目覚めさわやかで、ご飯が美味しく、普通に仕事をして、人と遊んで、楽しく一日を終える」という生活があったことを、あなたは覚えていないかもしれません。少なくともそんな生活はもう送れないと思っていることでしょう。
でも、そういう日はあるのです。
カウンセリングが終わった日。私は涙しました。
「つらかったな。大変だったな。」という思いと、「これから普通のつらくない生活があるのだ」という希望で、とめどなく涙が溢れてきました。(もちろんそこからもいくらかの浮き沈みはありました。)
色々、大変だとは思いますし、私は運が良かっただけなのかもしれません。
でも諦めてしまったらそこで終わってしまいます。頑張りどころ(正念場)を間違えず、しっかり前を向いて生きましょう。応援しています。